シンデレラに恋のカクテル・マジック
「応接室にご案内いたします」

 女性がデスクを回って、菜々に左側を示した。彼女が〝応接室〟というプレートが貼られたドアを開けて、菜々を中に促す。

「柳井取締役に連絡いたします。こちらでお待ちくださいませ」
「ありがとうございます!」

 菜々はぺこりと頭を下げて、応接室に入った。いかにもオフィスの応接室といった感じの、白い壁が清潔そうな部屋だ。中央に置かれた茶色の革張りのソファに、遠慮がちに腰を下ろす。

(叔母さん、会ってくれるかな……)

 一臣の話では、菜々が見つかったことはまだ伝えていないということだった。

(でも、さすがにそろそろ伝えていてもいいんじゃない?)

 そう思ったが不安になる。

(新手の詐欺とか思われたらどうしよう……。いえ、それより会ってもらえないかも……)

 なにしろ由香里は佐百合の身代わりとなってヤナイ・コーポレーションの社長と結婚したのだ。時間が経つのがやけに遅い。会ってもらえないのではと不安になり始めたとき、ようやく応接室のドアがノックされた。

「失礼します」
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