シンデレラに恋のカクテル・マジック
 菜々は一臣の話を思い出しながら、おずおずと言う。

「でも、和倉さんは、叔母様が爽介くんを社長の後継ぎにと期待して、アメリカの大学に通わせたがってる、というようなことを言っていましたけど……」

 菜々の言葉を聞いて、由香里がおかしそうに笑い声を上げた。

「和倉くんがそんなことを言ってたの?」
「はい」
「それはないわ」
「どうしてですか?」
「爽介が……息子がそれを望んでいないから」

 菜々は瞬きをした。

「爽介はテニスが大好きで、まだ中学生なんだけど、将来の夢はプロ・テニス・プレイヤーって決めてるのよ。テニス留学だってしたがってる。私はもちろん応援したいと思っているわ。でも、父がねぇ」

 由香里がため息をついて続ける。

「血縁にこだわりすぎるから。〝テニスばかりしとらんと経営学を学べ〟だなんて言うのよ。爽介はまだ中学二年生なのに。ホント、いつまで経っても頭は固いまま」

 由香里が小さく首を振った。

「でも……叔母様がいれば、爽介くんは夢を叶えられそうな気がします」
「そうかしら」
「はい。爽介くんには叔母様というお母様がいて、うらやましいです」
< 243 / 278 >

この作品をシェア

pagetop