シンデレラに恋のカクテル・マジック
 菜々は心底そう思った。祖父の意に沿わない夢を相談して応援してもらえるのだから、こんなに力強いことはないだろう。

 由香里が微笑みながら言う。

「私は叔母としてあなたの力になってあげたいとも思っているのよ」
「叔母様……」

 由香里の表情はとても穏やかで、良介に結婚相手を決められたことに反発して、ホストまで連れ込んだことがあるとは思えないほどだ。その顔に浮かぶ温かな笑みは、一人ではないという安心感となって、菜々の胸に染み込んでいく。

「その深森さんって人のことだけど……」
「はい」

 由香里がテーブルの上で両手を軽く握った。

「私は夫もずいぶん年上だし、誰かと電撃的に恋に落ちるような経験をしなかったから、いいアドバイスになるか自信はないんだけど……あなただけここでこんなに苦しむなんておかしいと思うわ。悩むくらいならいっそのこと、その気持ちを深森さんにぶつけてみたら?」
「気持ちを……?」
「そう。あなたがどれだけ苦しんでいるか、どれだけ彼のことを想っていたか。思っていることを言ってしまうと、案外すっきりするものよ。もしすっきりできたら和倉くんのプロポーズを受けてもいいと思うし、まだ引きずりそうなら和倉くんにそれを正直に伝えるの。それでもし和倉くんが返事を保留にしてもいいと言ってくれるなら、私と柳井のように、少しずつ互いの距離を縮めていくというのもいいんじゃないかしら」
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