シンデレラに恋のカクテル・マジック
 菜々はそう言うと、ドアから離れてベッドに腰を下ろした。永輝の携帯番号にかけて着信拒否されているのだから、かけるならサンドリヨンだ。でも、バーの番号は登録していなかったので、サウス・オオサカ・マガジンのウェブサイトにアクセスした。サマー・フェスタの記事のページに、サンドリヨンの住所と電話番号が掲載されているのだ。その番号に菜々は電話をかけた。

 呼び出し音が一回、二回……。

(お願い、永輝さん、出て)

 そろそろ開店準備をする時間なのに永輝はまだバーに来ていないのか、六回目のコール音が菜々の耳に響いた。

(どうしよう……)

 焦りを感じたとき、ようやく通話のつながる音がした。

「ありがとうございます、サンドリヨンです……」

 永輝の声が聞こえてきて、菜々は必死で話しかける。

「あのっ、永輝さん、私、菜々です。どうしても話したいことが……」

 そう言った菜々の声に、永輝の単調な声が重なる。

「本日は都合により休業いたします。またのご連絡、ご来店をお待ちしております……」

(なんだ、留守番電話だったんだ……)

 がっかりする菜々の耳に、永輝のメッセージが続く。
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