シンデレラに恋のカクテル・マジック
 菜々はカクテルから永輝の顔に視線を移した。彼が一転、緊張した面持ちで言う。

「そう。〝それから二人はずっと幸せに暮らしましたとさ〟ってやつ。俺と菜々ちゃんもそうなりたいんだけど、どうかな?」

 物語はここで終わるけれど、二人の幸せはこれからもずっと続く。そんな明るい未来を予感させるハッピーエンドの言葉を聞いて、菜々の顔に自然と笑みが浮かぶ。

「じゃあ、このカクテルの魔法は一生解けませんよね?」
「ああ」
「嬉しい!」

 菜々は笑みを大きくして彼の首に飛びついた。

「よかった」

 永輝がホッと表情を緩め、菜々の腰に両手を当てた。その手を菜々の両太ももの裏側まで滑らせ、持ち上げて彼の膝の上へと導く。永輝の膝に跨がるという大胆な格好で彼と向かい合った菜々は、カウンターの上に手を伸ばしてグラスを取った。

「いただきます」

 唇にそっとグラスを運ぶ。少し口に含むと、心までとろけそうな優しい甘さだ。滑らかな舌触りにうっとりしていると、永輝が彼女の手からグラスを取ってカウンターに戻した。

「それ以上飲んで爆睡されたら困るから、今日はここまで」
「えー……」
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