シンデレラに恋のカクテル・マジック
誰もいない小さな公園のはす向かいに、ダークブラウンの外壁がおしゃれな五階建てのマンションがある。その店はその一階にあった。淡いオレンジ色のライトが照らす黒板に、白いペンキの文字でBAR CENDRILLONと書かれている。
(サンドリヨンってフランス語でシンデレラってことだよね……)
菜々は引き寄せられるように横断歩道を渡って、そのバーの前で立ち止まった。ショルダーバッグの中に手を入れ、もらったばかりの薄い茶封筒を握りしめる。中に入っているのは今月のバイト代だ。貴重な生活費。でも、いきなり今日、という何の心構えもできないうちに突然クビを切られたこのやり場のない気持ちを晴らしたい。
(コンビニで缶カクテルを買うと、二百円でお釣りが来る。でも、こういうお店だと絶対に一杯五百円以上はするよね。それにチャージ料だって取られるだろうし……)
節約しなくちゃ、という気持ちと、ぱーっと使ってすっきりしちゃえ、という気持ちが葛藤する。
(一晩……ううん、一時間でもいい。安アパートでの貧乏生活を忘れて、優雅な気持ちに浸りたい……)
(サンドリヨンってフランス語でシンデレラってことだよね……)
菜々は引き寄せられるように横断歩道を渡って、そのバーの前で立ち止まった。ショルダーバッグの中に手を入れ、もらったばかりの薄い茶封筒を握りしめる。中に入っているのは今月のバイト代だ。貴重な生活費。でも、いきなり今日、という何の心構えもできないうちに突然クビを切られたこのやり場のない気持ちを晴らしたい。
(コンビニで缶カクテルを買うと、二百円でお釣りが来る。でも、こういうお店だと絶対に一杯五百円以上はするよね。それにチャージ料だって取られるだろうし……)
節約しなくちゃ、という気持ちと、ぱーっと使ってすっきりしちゃえ、という気持ちが葛藤する。
(一晩……ううん、一時間でもいい。安アパートでの貧乏生活を忘れて、優雅な気持ちに浸りたい……)