シンデレラに恋のカクテル・マジック
「もしよかったら、クビになったっていう家庭教師のバイトの代わりに、サンドリヨンを手伝ってくれないかな?」
「え?」
「フレアをやってる間や俺がメシを食ってる間に店を見ててくれると助かるんだ。もちろん、来るのは毎日じゃなくて、週に一回とか菜々ちゃんの都合のいいときだけでいい。昨日のカクテル代は、そのバイト代から引かせてもらう。それでどう?」
「でも……」
「食事も付けるよ。実はさ、前のバイトの娘(こ)とちょっと付き合ったんだけど、別れたらバイトも辞められちゃって、困ってたんだ。そうそう、それに客は俺の知り合いばかりだから、変なヤツはいない。あ、昨日みたいに俺のことを遊び人みたいに言うヤツもいるけど、菜々ちゃんには手を出さないし、ほかの客にも手は出させない。だから、引き受けてもらえないかな?」

 永輝が最後はどこか必死にも聞こえる口調で言った。菜々はフォークを持った手を止めて考える。

(食事付きなら願ったり叶ったりよね。バーの雰囲気も、昨日の感じじゃ悪くなかったし、永輝さんも手を出さないって約束してくれるんなら……)

「ぜひ働かせてください」
「いいの?」

 永輝の顔が嬉しそうにほころんだ。
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