シンデレラに恋のカクテル・マジック
 そこは十畳くらいのフローリングの部屋で、入ってすぐのところに簡易キッチンがあり、中央には折りたたみ式のローテーブルが置かれていた。壁際には三人掛けの大きなソファがあり、その横には扉付きのダークブラウンのハンガーラックがある。永輝がその左側の扉を開けて、ビニールカバーに包まれた真新しい制服を取り出した。

「俺と同じ、白いシャツに赤色のクロスタイ、それに黒のベストと……菜々ちゃんはスカート」
「あ、はい」
「着替えたらバーに来てくれるかな」
「わかりました」

 菜々が返事をしている間に永輝は部屋を出て行った。菜々は広い部屋を見回して、ホッとため息をつく。

(私のアパートの部屋よりも広い……)

 あの狭いアパートで一人寂しくご飯を食べるより、ここでまかないの食事を取る方が贅沢な気分を味わえそうだ。そんなことを思いながら、制服のカバーを外した。着てきたスーツの上下とカットソーを脱いで、制服のブラウスに袖を通す。タイトスカートを履いて後ろのファスナーを上げた菜々は、ロッカーの扉の鏡に映る自分の姿を見て目を丸くした。サイドに深く入ったスリットがやたらとセクシーで、ついついスカートの裾をつかんで引き下げたくなる。
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