シンデレラに恋のカクテル・マジック
(バーテンダーの制服ってみんなこんななの? それとも永輝さんってこういうのが好みなのかな……)

 そんなことを思いながら、ベストを羽織ってクロスタイのボタンを留めた。そうしてドアを開けてバーに入ると、永輝はカウンターの上を布巾で拭いていた。

「お、おかしくないですか」

 菜々がおずおずと言うと、永輝が笑顔になる。

「うん、似合ってる。かわいいな」

 久しぶりに聞いたほめ言葉に、菜々の心臓がトクンと音を立てた。

「こうして並ぶと似合いのカップルだな」

 永輝が菜々の横に並んで立った。菜々より十五センチほど高い位置で、彼の端正な顔が微笑む。

(永輝さんってそういうセリフを普通に言うのよね……)

 いちいちドギマギしてたら心臓が持ちそうにない。菜々は胸に手を当てて深呼吸を繰り返した。

「まずは何をすればいいですか?」
「お、仕事熱心だね。じゃあ、まずはそっちの丸テーブルを拭いてくれるかな。それからスツールの座面と背もたれも布巾で拭いてほしい」 
「わかりました」

 菜々は永輝から新しい布巾をもらって、丸テーブルを拭き始める。店内にはカウンター席が六席と、丸テーブルが四脚、それぞれのテーブルの周りに脚の長いおしゃれなスツールが三脚ずつある。
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