シンデレラに恋のカクテル・マジック
「サンドリヨンは十八人で満席ですか?」
「そうだね。でも、お客さんは多くても十人ちょいくらいかな。少ない日だと二人とか」
「あ、それって、きっとカップルですよね」
「そうそう。菜々ちゃん、勘が鋭い。でも、女性同士のときの方が多いかな」

 その女性たちはきっと永輝さん目当てなんだろうな。菜々はそんなことを思いながら、カウンターにチラリと視線を送った。そこでは永輝がグラスを磨いている。その横顔は凛々しいほど真剣だ。

(前の前の前の……何人か前の彼女と別れてから、ずいぶん遊んでそうな感じだったけど、周囲の女性の方が永輝さんを放っておかないのかもしれないね……)

 そう思ったとたん、彼がニヤッと笑って菜々を見た。

「何、菜々ちゃん。俺に見とれてた?」
「いっ、いいえ! フレアとか掃除とか、バーにかかわることなら真剣なんだなって思ってただけですっ」
「おかしいな、女性に対してもいつも真剣なつもりだけど」

 永輝が言って笑った。

(そうなのかな……。私にはまだ永輝さんが前の前の前の……何人か前の彼女を忘れてないから、たくさんの人と付き合ってきたように思えるけど)
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