シンデレラに恋のカクテル・マジック
 大樹が顔を赤くしながら永輝を睨む。

「バーでリンゴジュースなんか飲むか。ジン・ライムだよ、ジン・ライム」
「わかってるって。かっこつけるからからかっただけだ」
「趣味悪っ。菜々ちゃん、永輝はこういうヤツなんだから、外見とか甘い言葉に騙されちゃダメだよ」

 ふてくされ顔の大樹に言われて、菜々は笑ってしまいそうになる顔を懸命に引き締めた。永輝は大樹の言葉を聞き流して菜々に話しかける。

「菜々ちゃん、これがオールドファッションドグラスね」

 永輝が口が広く背の低いタンブラーを取って菜々に見せた。ロックグラスとも呼ばれているものだ。

「はい」
「グラスに氷とドライジン、ライムジュースを入れて、バースプーンで軽くステア、つまり混ぜる。そしてカットしたライムを飾れば完成」

 永輝が言った通りの手順でカクテルを作った。

「シェークしないんですか?」

 菜々の問いかけに永輝が答える。

「うん。こういう技法をビルドって言うんだ」
「そうなんですね」

 これも頭の中のメモ帳にしっかりメモ。

「俺は今日はバーボンのロックにしようかな。シングルで」
「了解」
< 62 / 278 >

この作品をシェア

pagetop