シンデレラに恋のカクテル・マジック
「ん~、おいしい!」

 食べたその一口に、文字通り悶絶する。

(永輝さんってホントに何でもできる人なんだな~。これで真面目になれば本当にいいダンナさんになれそうなのに……。前の前の前の……何人か前の彼女に振られてから、本気の恋ができなくなったのかな。もうその彼女とはよりを戻せないのかなぁ……)

 そう思うとなんだかやるせない気持ちになってきた。伝えたい人に想いが伝えられないのは、やっぱり悲しい。


 その後、永輝が代って休憩に入ったが、菜々を気遣ってか、十五分ほどでバーに戻ってきた。フレア・ショーの始まる十時には、それ目当ての客が増えて、今日は大樹たちを含めて十人の常連客が永輝のフレアを楽しんだ。菜々は永輝が料理するのを手伝いながら皿を運んだり洗ったりして、バーが閉店する午前〇時より一時間早い十一時にバイトを終えた。

 スーツに着替えて休憩室から出てきた菜々に、永輝が言う。

「今日はありがとう。すごく助かったよ」
「初日であまり要領よくできなかったんですけど……そう言ってもらえてよかったです」
「遅い時間だし駅まで送るよ」

 永輝が言ってくれたが、菜々はあわてて首を振る。
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