シンデレラに恋のカクテル・マジック
「いいえ! 歩いて十分ですし、大丈夫です! それに、永輝さん目当てのお客様ががっかりしますよ」
菜々が言うと、永輝が軽く肩をすくめた。
「今じゃ大樹目当てになってるようだけど」
永輝に言われて菜々はバーカウンターを見た。ワンピースとパンツスーツの女性二人組は大樹と談笑している。
「残念ですね」
菜々が冗談ぽく言うと、永輝が黙ったまま、また肩をすくめた。たいして気にしている様子でもない。
「それじゃ、次は木曜日に来ますね」
「ああ、よろしく」
永輝がバーカウンター横の扉を開けてくれた。客が出入りする入り口とは違い、そこは店の横――つまりマンションの横――の狭い路地に出る。
「それじゃ、おやすみなさい」
「ああ、おやすみ。気をつけて」
永輝が軽く手を上げてドアの向こうに消えた。
菜々は駅へと向かって歩き出したが、知らず知らず跳ねるような足取りになる。
(カクテルのことも教えてもらったし、オムライスもおいしかったし、永輝さんのフレア・ショーもかっこよかったし! 楽しかったなっ)
塾や予備校とは百八十度違う、大人な雰囲気ながらも和やかなバーでのアルバイトを、菜々は気に入り始めていた。
菜々が言うと、永輝が軽く肩をすくめた。
「今じゃ大樹目当てになってるようだけど」
永輝に言われて菜々はバーカウンターを見た。ワンピースとパンツスーツの女性二人組は大樹と談笑している。
「残念ですね」
菜々が冗談ぽく言うと、永輝が黙ったまま、また肩をすくめた。たいして気にしている様子でもない。
「それじゃ、次は木曜日に来ますね」
「ああ、よろしく」
永輝がバーカウンター横の扉を開けてくれた。客が出入りする入り口とは違い、そこは店の横――つまりマンションの横――の狭い路地に出る。
「それじゃ、おやすみなさい」
「ああ、おやすみ。気をつけて」
永輝が軽く手を上げてドアの向こうに消えた。
菜々は駅へと向かって歩き出したが、知らず知らず跳ねるような足取りになる。
(カクテルのことも教えてもらったし、オムライスもおいしかったし、永輝さんのフレア・ショーもかっこよかったし! 楽しかったなっ)
塾や予備校とは百八十度違う、大人な雰囲気ながらも和やかなバーでのアルバイトを、菜々は気に入り始めていた。