シンデレラに恋のカクテル・マジック
第五章 言えなかった過去
それからも、サンドリヨンでのアルバイトはそんなふうにして過ぎた。早めに行った日には、オープン前の店内で永輝がフレアを教えてくれる。彼が言う通り、夢中で練習していると、その間はほかのことを忘れられるのだ。新しい技を教えてもらうのも、体を動かすのも、お堅いアルバイト一色だった菜々の日常に、新しい刺激をもたらしてくれる。それが嬉しくて、菜々はサンドリヨンでのバイトがある日は、予備校の受付の仕事を終えるとまっすぐに来るようになった。
サンドリヨンで働き始めてから二週間が経った金曜日。開店準備を終えたが、まだ客が一人もいない店内で、菜々はカップ・インという技を教えてもらっていた。右手で握ったボトルをふわっと投げ上げ、左手に持ったティンでボトルの底をすくうようにして受け止める技だ。
「わあ、できた!」
ティンにボトルがうまく収まり、菜々は誇らしげに永輝に見せた。
「うん、うまいうまい」
カウンターにもたれていた永輝が拍手をした。
「ショーのとき、永輝さんはボトルを背中から投げ上げて体の前のティンで受けるって技をやってますよね」
「ああ、あれはまだ菜々ちゃんには難しいかもね」
サンドリヨンで働き始めてから二週間が経った金曜日。開店準備を終えたが、まだ客が一人もいない店内で、菜々はカップ・インという技を教えてもらっていた。右手で握ったボトルをふわっと投げ上げ、左手に持ったティンでボトルの底をすくうようにして受け止める技だ。
「わあ、できた!」
ティンにボトルがうまく収まり、菜々は誇らしげに永輝に見せた。
「うん、うまいうまい」
カウンターにもたれていた永輝が拍手をした。
「ショーのとき、永輝さんはボトルを背中から投げ上げて体の前のティンで受けるって技をやってますよね」
「ああ、あれはまだ菜々ちゃんには難しいかもね」