シンデレラに恋のカクテル・マジック
 言われて闘争心に火がつき、菜々は無謀にも右手を背中に回してボトルを放り投げた。

「えいっ」

 気合い充分で投げ上げたそのボトルは、何をどう間違ったのか、永輝目指して飛んでいく。

「あっ」
「おっと」

 菜々は息を呑んだが、永輝は顔の前に飛んできたボトルを難なく片手で受け止めた。

「ごめんなさい! 大丈夫でしたか?」

 菜々はあわてて彼に近寄った。

「うん、大丈夫。菜々ちゃんって意外と負けず嫌いなんだな」

 永輝が左手を伸ばして菜々の髪の毛にふわりと触れた。そうしてサイドの髪をつまんで彼が指に絡める。

「菜々ちゃんの髪の毛ってまっすぐでサラサラしてる」
「そ、そうですか?」

 永輝の親しげな仕草にはやはりまだ少しドギマギしてしまう。

「え、永輝さんの髪もサラサラですよ」
「そう?」

 永輝が自分の髪を両手でわしゃわしゃと掻き回した。

「ヘアスタイルが乱れますよ」
「無造作ヘアにしてるからいいんだよ」

 永輝の言葉に菜々が笑ったとき、バーのドアが静かに開いて、黒の清楚なワンピース姿の女性が入ってきた。

「いらっしゃいませ」

 菜々は笑顔のまま言ったが、横で永輝が息を呑み、菜々は驚いて彼を見た。
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