シンデレラに恋のカクテル・マジック
「バカだな……本当にバカだな。穂乃花は俺の気持ちなんて何もわかっちゃいないんだから」

 永輝が口角を引き上げて言い、穂乃花がふっと笑った。

「そうみたいね。永輝くんもお幸せに」

 そう言って立ち上がる。

「ごちそうさま、おいしかったわ。おいくら?」
「いいよ。俺からの結婚祝い。ってカクテル一杯じゃ安すぎるか」
「そんなことないわ。ありがとう。それから、お邪魔様」

 穂乃花が永輝の腕の中で固まっている菜々に視線を向けたので、菜々はぎこちなく頭を下げた。穂乃花が小さく会釈をして背を向け、バーの出口へと向かった。そして、静かにバーのドアを開け、一度振り返って永輝を見る。

「さようなら」
「ああ」

 永輝が答えた直後、穂乃花が店を出てドアが閉まった。バタンという音を聞いたとたん、菜々の目から涙があふれ出した。首だけねじって永輝を見上げると、永輝がギョッとしたように腕を解く。

「そんなにイヤだった? ごめん」

 彼があわてて言ったが、菜々は首を振って泣きながら言う。

「どうしてあんなことを言ったんですか!」
「え?」

 永輝が首を傾げた。
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