シンデレラに恋のカクテル・マジック
第六章 初めての共同作業
翌日の土曜日、菜々はすっきりした気分で目を覚ました。携帯電話の時刻表示を見ると、まだ六時半だ。
(永輝さんは起きてるかな?)
静かに起き上がってクローゼットを開けた。大学時代に着ていたブラウスとスカートを出して着替えて、部屋のドアを開ける。足音を忍ばせて階段を下り、洗面所で顔を洗った。バッグの中のポーチを出してメイクをしていると、二階で客間の扉の開く音がして、永輝が階段を下りてきた。
「おはよう」
彼はもうパジャマ姿ではなく、昨日着ていたバーテンダーの白いシャツと黒のスラックスに着替えていた。彼からパジャマを受け取りながら、菜々は挨拶を返す。
「おはようございます。昨日は無理を言って泊まっていただいて、すみませんでした」
「菜々ちゃんは相変わらず他人行儀なんだな。お互いのこともずいぶんわかってきたし……もっと気楽にしてくれていいのに」
永輝が伸びをして言った。
「そ、そうですか」
「うん。タメ口でいい」
「タ、タメ口……」
大学卒業後、証券会社で四年、オーナー・バーテンダーとして二年働いている永輝は、現在二十九歳、もうすぐ二十三歳になる菜々とは六歳の年の差がある。
(そんなにも年上の人にタメ口をきいていいのかな)
「その方がもっと距離が縮まりそうだろ?」
永輝が照れたように笑った。彼ともっとお近づきになれたら嬉しいけれど、彼は菜々の両親の写真に向かって〝そばで見守っていきます〟と話しかけていた。つまりは保護者代わりということなのだろう。
そう考えると菜々の胸が締めつけられるように痛んだ。菜々がその痛みの理由を考える前に永輝が言う。
(永輝さんは起きてるかな?)
静かに起き上がってクローゼットを開けた。大学時代に着ていたブラウスとスカートを出して着替えて、部屋のドアを開ける。足音を忍ばせて階段を下り、洗面所で顔を洗った。バッグの中のポーチを出してメイクをしていると、二階で客間の扉の開く音がして、永輝が階段を下りてきた。
「おはよう」
彼はもうパジャマ姿ではなく、昨日着ていたバーテンダーの白いシャツと黒のスラックスに着替えていた。彼からパジャマを受け取りながら、菜々は挨拶を返す。
「おはようございます。昨日は無理を言って泊まっていただいて、すみませんでした」
「菜々ちゃんは相変わらず他人行儀なんだな。お互いのこともずいぶんわかってきたし……もっと気楽にしてくれていいのに」
永輝が伸びをして言った。
「そ、そうですか」
「うん。タメ口でいい」
「タ、タメ口……」
大学卒業後、証券会社で四年、オーナー・バーテンダーとして二年働いている永輝は、現在二十九歳、もうすぐ二十三歳になる菜々とは六歳の年の差がある。
(そんなにも年上の人にタメ口をきいていいのかな)
「その方がもっと距離が縮まりそうだろ?」
永輝が照れたように笑った。彼ともっとお近づきになれたら嬉しいけれど、彼は菜々の両親の写真に向かって〝そばで見守っていきます〟と話しかけていた。つまりは保護者代わりということなのだろう。
そう考えると菜々の胸が締めつけられるように痛んだ。菜々がその痛みの理由を考える前に永輝が言う。