シンデレラに恋のカクテル・マジック
そうしてその日、菜々は永輝にアパートまで車で送ってもらって、着替えてから予備校に出勤した。永輝とは帰りの車内で話し合って、四週間後のサマー・フェスタまでにタンデム・フレアのパフォーマンスを仕上げるため、空いた時間はできるだけ一緒に練習しよう、ということになった。
(明日の日曜も永輝さんに会えるんだぁ)
フレアの練習のためとはいえ、プライベートな時間にまた永輝に会える、と思うと、どうしても頬が緩んでしまう。
「斎城さん、何かいいことあったぁ?」
夕方から菜々に替わって受付に入る三十歳のパートの遠藤(えんどう)薫(かおる)が、出勤して来るなり菜々を見て言った。
「えっ」
バイトの時間が終わって筆記用具を片付けているときに言われて、菜々は手を止めた。
「いつも帰りの準備をするとき、今日も一日全力で仕事しました~って感じの疲れた顔をしてるのに、今日はなんだかウキウキしてる感じだから」
薫に言われて、菜々は恥ずかしくなり、真顔を作って言う。
「明日ちょっと楽しみな予定があって」
「デート?」
「そんなんじゃないです」
「ふぅん」
薫に疑り深げに言われて、菜々は苦笑して真相を明かす。