異世界の国を救う時間があるなら本を読みます。
「では、ステータスを私に報告してください」
そばに立っていた鎧を纏った騎士が言う。
「私は騎士団長のソル・エスターです。皆様の能力向上の助力をさせていただきます。そのためにはステータスを見て訓練内容を組むのが最も効率的です」
生徒たちがその言葉に従って、ステータスをエスター団長に見せようとする。
さすがに星々はこの展開を見逃すことができなかった。
「すみません、エスター殿」
「な、何ですかな、勇者様」
突然モサモサヒョロリに話しかけられ、どもるエスター団長。
「私にあなた方の言う戦力向上訓練をする義務はありません。なんせそちらの事情ですから。私は辞退させていただきます」
一人称を「俺」から「私」に改め、反論させない雰囲気を作る。
話の主導権はこちらにあると思わせるのは、交渉術の基本中の基本だ。
「し、しかし勇者様。我が国は戦力が少なく……」
「それはそちらの事情でしょう。何故私を巻き込むのですか?それこそ私1人くらいいなくなっても…」
「おい、由良。何言ってんだ!この国の危機なんだぞ!」
と大輔。
「そうよ、由良くん。危ない状況にあるのに助けようともしないなんて酷いでしょ!」
大輔にのっかり、亜香里も苦言する。
「その通りやぁ、由良くん。あんまりにも酷いと思うでぇ」
大輔とつるんでいるハーレム要員の1人、ナイスボディな笹田栞(ささだしおり)も言う。
「あたしたちには国を救える力があるんだからっ!みんなで救お?」
同じくハーレム要員の元気っ娘加賀春日(かがはるひ)も星々を止める。
それを見ていた他のクラスメイトも、星々を留めようと声を投げかける。
ムードメーカーが正義感溢れる生徒だと、クラスも自然とそうなる。
『クラス』とは『空気』なのだ。