異世界の国を救う時間があるなら本を読みます。
自分を責めるクラスメイトを見て、星々は呆れるばかりだった。
(こいつらは戦力向上訓練の意味を理解してないのかな?……先にあるのは戦争だというのに。自分の力を過信してゲーム感覚でこの世界にいると、死ぬよ)
本のことばかり考えている星々だが、ここは現実であると痛感していた。
聡い星々だったからできたことだ。
しかし、平和な日本という国にどっぷり浸かっていた他の生徒たち(と教師)は違う。
しかし、星々が呆れている一番の理由はこうだった。
(元の世界に帰る方法すら教えられてないのに、よく信用できるね。しかも異世界人に戦争を押し付けようとするような奴らを)
そう。
「救ってください」と彼らは言った。
じゃあ「救ったあと」は?
帝国や魔人種は本当にこの王国に攻め入ろうとしているのか?
そもそも、この世界に平和は訪れるのだろうか?
いや、この王国はもしかしたら別の目的があって俺たちを召喚したのではないか?
星々は考え出したらキリがないほど、多くの疑問を抱えた。
故に訓練参加を断ったのである。
確かに危機的状況にある国を見放すのは人として邪道だが、星々は主張は正論だ。
エスター団長は星々のクラスメイトが援護してくれたにも関わらず、星々を訓練に参加させる理由が思いつかなかった。