異世界の国を救う時間があるなら本を読みます。
「皆さんはこの国のために助力したいならすればいい。しかし、私は助力なんてしたくないのですよ」
ギロリと口うるさいクラスメイトを睨む。
目は前髪に隠れて睨んでいるかクラスメイトはわからなかったが。
「……エスター団長、よろしいですね?なに、こっちの世界に召喚したのはお前らだから、お前らの管轄外でも生活の援助をしろ、などということは言いませんよ。いい条件でしょう?もとから1人いなかったと思っていただければよろしいのです。私は自分で生活いたしますので」
「……しかし」
「はぁ…。仕方ありませんね。…私のステータスを見ていただきたい」
そう言ってエスター団長にステータスを見せる。
「こ、これは……」
「ええ、私は異世界人ですが普通の人間種となんら変わりありません。固有スキルも『速読』という、戦闘には役に立たないものですし、私以外の召喚された者には勇者という称号がついていますが、私にはついていません。こんな私をどう使うのです」
「使うなんてそんな…」
「使うどうこうの話は今はいいでしょう。私はエスター殿の返事が聞きたいだけです」
「……わかりました。あなたを国の管轄外にします」
「そうですか。それが聞けてよかった」
ニッコリと悪魔の笑みを浮かべる。
しかし、顔の上半分が前髪で隠れており、口が歪んだことしかわからない。
「ああ、そうだ。身分証明書などの制度はこの国にありますか?」
「は、はい。それがどうかしました?」
「…察しの悪い……。その証明書くらいはもちろん作っていたはだけますよね?」
抜かりはない星々であった。