異世界の国を救う時間があるなら本を読みます。

 (この世界の人にとって、魔法は生活の一部なんだな)

 星々は感心していると、重大なことに気がついた。

 (そういえば俺…魔法が使えない。いや、使えるかもしれないけど、使い方を知らない)



 星々が早々と城を出て行ったのは、周囲の人間の敵対的な視線が心地悪かっただけではない。

 星々はこの異世界自体に溢れて止まない好奇心を抱いたのだ。

 星々は城を出る際、身分証とともに莫大な金を貰うことも可能だった。

 しかし、それはしなかった。

 なぜなら、自分で金を稼いでみたいという欲求に駆られたからだ。

 自分の知らない土地で、自分の手で金を稼ぐということは、星々にとって"未知"だった。

 星々は"未知"が大好きであり、また酷く嫌っていた。

 自分の知らないことがあるとわくわくと心が踊るが、その反面、自分が知らないことがあるという事実が嫌だった。

 故に、星々は聡明でありながらも、国から身分証だけを受け取り、金を貰わないという選択をしたのだった。
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