だからそっちの"好き"じゃない!
「優奈」

背を向けかけた私に流可の声がかかる。

「なに……?」

そう言って振り返ると…

「……!」

流可は…

…私にキスを落とした。

一瞬の触れるか触れないかの、そんなキス。

そんな一瞬の出来事のあと、

私はカッと顔が赤くなったのと同時に頭に血が上って…

…パシンっ!

気づいたときには流可の頬を叩いていた。

「っ…最低っ…」

それだけ言うと、私はその場を駆け出した。

さっきなんとかとどめた涙も、

今はもう止められない。

なんで?

なんでキスなんてしたの?

さっきから鼓動が収まらない。

流可を思ったままトクトクと鳴り続けている。

振った直後にキス?

どういう思いからしたの?

からかったの?

…わかんない…

走っていた足を止めて、流れる涙を拭う。

わかんない…流可が、わかんない…

私はもう一度涙を拭うと、

家に向かって再び走り出した。
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