だからそっちの"好き"じゃない!
心臓が痛い…

息ができない…

苦しい…

俺は見てられなくて、踵を返してゆっくりと二人のいる教室から遠ざかる。

…"好きなのに"…か…。

"辛い"…か…。

…優奈の心を射止めたのは、誰だろう…

長い間ずっと一緒にいた俺じゃなく、優奈が選んだ相手は誰だろう…

口の中が鉄の味がする。

唇を強く噛みすぎた。

だけどそんな痛みよりも、

胸の痛みの方が何倍も…

…優奈……

好きなのに…届かないのは俺だよ…

きっと優奈の想いは届いてる。

…優奈みたいな子…好きにならないやつがいるわけねぇだろ…?

…だからそいつに告白したら…

優奈は…もう…

俺は再び鉄の味のする唇を噛み締め、

ぐっと前を向いたまま、再び踵を返した。
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