だからそっちの"好き"じゃない!
そう言うとうん、と頷く秋君。

「なんかやたら流可にベタベタしてる女子。俺は正直苦手」

「そ、そうなんだ…」

流可にベタベタ…

…チクっ…

…え?

なんだろ今の痛み…

首を傾げていると

「優奈?」

流可が私に気づいて

桐生さんを置いてこっちに来た。

「どうした?」

「ちょ、流可、桐生さんと話してたんでしょ?私はあとでいいから…」

そう言うとあー…と言いながら

チラッと桐生さんの方を見る。

「別に、好きな子優先なのって当たり前だし」

そんなことを言う流可に

なぜか少しほっとする。

でもすぐにいつもの調子に戻った。

「も、もう!
あ、それでね、今日一緒に帰れないの」

「…まさかまた合コン…「違うよ!日直なの!」

流可の言葉に慌ててそう言う。

そんな毎日毎日

合コン行くはずないじゃない!

「そっか、なら待っといた方がいいかな」

「ううん、遅くなるだろうし先帰って?」

「わかった」

私は流可の返事を聞いて頷くと

「じゃあね〜」

と言って自分の教室に戻った。

その時、桐生さんが

私を思いっきり睨みつけている

ことには気づかなかった。
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