だからそっちの"好き"じゃない!
そのまま通り過ぎようとして

足を進めると

その笑い声が話し声に変わる。

「で、どうなの?東城君」

…流可の話?

「うーん、なかなか落ちない…」

あの声…桐生さん…?

っていうか"落ちない"って?

「まあそりゃそうでしょ。
神城優奈がいるんだもん」

……私!?

思わず足を止めて耳を傾ける。

「ま、そうなんだけどさ」

「やめときなよ。東城君ってさー、神城優奈にまつわる噂絶えないんだよ?」

「そーそー!幼稚園の頃からずっと一途だとか、昔嫉妬して相手ボコボコにしたとか!」

「知ってる〜!それのせいで少年院入ったとかも聞いたことある!」

…な、なんかすごい噂になってるな…

絶対妬んだ男子が言ったんだよ…

「…だからこそ落とせたら…面白くない?そのためにはまず神城優奈をやるべきでしょ」

「だねー、頑張って?」

「うん。既に絶好調。
おまけに東城君は気づいてないから好都合よ」

桐生さんはそう言ってふふっと笑った。

私はそっとドアから離れて

流可のいる教室に向かった。
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