だからそっちの"好き"じゃない!
「ちょっとあいつ…」

舞がそう言ってガタッと席を立つ。

けれど今日の桐生さんは

流可にベタベタしているわけではなく、

逆に大人しく

しょぼんとしている雰囲気だった。

そのままこっちに来て

なにか言おうと口を開きかけるけど、

また口を閉じてしまう。

「…オラ、さっさとしろ」

流可は低い声音でそう言い、

舞はそれに対して驚いた顔をした。

そりゃそうだよね、

流可がキレたとこ見てないし…

すると桐生さんが口を開いた。

「っ…神城さん」

「は、はい…」

緊張で身体を強張らせていると、

桐生さんはバッと頭を下げた。

「ごめんなさいっ!」

シーン……

クラス中が沈黙に包まれた後、

桐生さんはゆっくり顔を上げる。

「私…あなたが羨ましかった。
東城君を独り占めして、東城君はあなたにほんとウザいほどぴったりで…」

「…酷い」

「まあまあ…」

流可と秋君の言葉には耳を貸さず、

桐生さんはもう一度頭を下げた。
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