【彼氏、捨ててやります】
話し声を聞いていると、近くの階段を下りていったみたいだ。
よかった…。
ホッと息を吐く。
とその瞬間…
「俺から隠れるなんて良い度胸してんな、おいバカ杏奈」
「きゃっ…‼︎」
いきなり背後から斗真先輩が私のほっぺをつねってきた。
「と、斗真先輩!?なんで…っ」
「……お前が泣いてるのみてほっとくわけねぇだろ」
そう言いながら優しく笑う斗真先輩の姿を見ると、やっぱり。
…思わず弱音をこぼしてしまいそうになった。
でももう誰にも…迷惑かけたくない。
「……嫌です。もう……私なんてほっといてください‼︎‼︎‼︎」
「は?…ほっとくわけねぇっつったじゃん」
「もう、嫌んなっちゃったんです。何もかも…。だから…もう私に関わらないでください」
「……あっそ。わかった。もー関わんねぇよ」
斗真先輩はいつもより低い声のトーンでそう言い、スッと立ち上がった。
それから、階段を下りていく足音がした。
………….っ。
ごめんなさい、斗真先輩。
今の私は…本当最低です。
ほっといてくださいって言ったのは私なのに…。
なんでこんなに胸が苦しいんだろ…。