無理矢理シンデレラ!!
事の発端をかいつまんで説明すると、一週間前に遡る。
学校のテスト期間も終わり、あとは春休み待つだけだーっていう金曜日。
何故か帰りの早かった父さんが夕飯の時に改まって言ったのだ。
「イタリアに行くことになりました。」
母さんと私の箸が止まり、ぽかんと父さんの方を見る。
父さんは言い切ったぞーっとばかりに「よーしご飯ご飯……」なんて夕飯を再開しようとしている。
「「いやいやいやいや」」
もぐもぐと普通にご飯を食べ始めた父さんにやっとツッコミを入れる。
「えっ待っていつ!?いつなの!?それってわたし達もついて行くの!?ってかどの位の期間!?」
テンパった母さんが慌ててカレンダーとペンを持って来て矢継ぎ早に父さんに質問をしだした。
そりゃぁ慌てもする。うちの父さんは平凡道のプロフェッショナルと言ってもいいようなサラリーマンだ。
ふつーに会社行ってふつーに返って来るという生活を二十年間極め続けた男である。
出張はたまにあったが大体関東内、遠くても本州内だった。そんな父さんが!
「すげぇじゃん父さん!何、出世!?給料上がっちゃう感じですか!?」
意気揚々と机から見を乗り出して父に問うと、それまでもぐもぐしていただけの父さんの口がやっと言葉を発した。
「いや、期間は一週間だし、実際に仕事があるのは一日だけなんだ。」
とりあえず母さんが黙ってカレンダーを元の位置に戻した。
「なんかイタリアで会社のお偉いさんの集まるパーティーがあるらしくてそれに行くんだよ。」
「やっだあなたいつからお偉いさんになってたの!?」
「何!?えっ!?接待されるとか!?やっばちょっと父さんなんでそんなこと隠してんだよ!!」
「いや、接待されないよ。人手が足りないみたいだから受付けのお手伝いに行くんだよ。」
「「…………。」」
「凛海もそろそろ春休みだろう?パーティー関係者の家族は参加自由だから、みんなで行くかい?」
「「ソウデスネ。ソウシマショウカ。」」
こうしてわたし達家族のイタリア行きがまず決まった。