ひねくれ作家様の偏愛
取引をしよう。

彼はそう言っている。
おまえの望みを叶える代わりに、差し出せるものは出せ。
わかり安すぎる交換条件だ。

それと同時に、これが彼の立場の示し方なのだと理解した。
彼はこういうやり方で私を見下し、貶めたいのだ。
おまえは俺の下僕であるという確認をしたいのだ。

恋や愛の甘い感情はない。
ただの征服欲。
自分より弱いモノに『おまえは弱い』と覚えさせるための調教だ。


私は海東くんを呆然と見つめた。

年下の青年は涼しげな表情で私を見つめていた。
他者を踏みつけることに躊躇のない瞳だった。


絶望がじわりと心に染みを作る。

こんな方法でしか繋がれないのだろうか。


私が彼と出会った時、きっと違う未来だって見えていた。
作り手である彼を尊敬していた。
彼の創作に携われることを誇りに思っていた。

それなのに。
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