ひねくれ作家様の偏愛
10分かからずマンションの一室である私の部屋に到着。


海東くんにバスタオルを渡すと、ユニットバスの中に押し込んだ。

素直に彼がシャワーを浴びる水音を聞きながら、ひとり緊張感がいや増す。
やはりプライベートな空間に入れてしまったことが悔やまれた。
海東くんに変な気はない。それは今も昔も変わらないはず。

私と寝たことだって、仕事上の興味関心から。
私個人に対する興味はない。強いて言うなら、下僕としての立場をはっきりさせたいという欲求くらい。
そうだ、何も変な感情はない。
お互いに、……そう、お互いにだ。

今夜があの晩みたいに雨だから、感覚が狂っているんだ。

クローゼット内にしまったタンスから、一番大きなスウェットの上下を取り出す。彼の美意識からは外れそうだけど、これなら入るし冷えずに帰れるはず。


ほどなく、ユニットバスの扉が開いた。

海東くんが濡れた頭だけを出す。

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