ひねくれ作家様の偏愛
「着替えって」


「あ、これ。どうぞ」


彼の裸体が万が一にも視界に入らないように、目をそむけつつドアに近付く。
着替えを持った片手をぷるぷるいわせながら精一杯伸ばした。私の不自然な姿勢を見て、海東くんが変な顔をした。

それから、何か思いついたように微笑む。


「恥ずかしくないでしょう」


そう言って、腰にタオルを巻いただけの格好でバスルームから出てくる。
私の反応が面白いと判断したようだ。
もっと、遊んでやろうとも。


「海東くん、出てこなくていいから。着替えなさい」


「別に、俺の裸なんて、一度見てるじゃないですか」


「そういう話じゃなくて……」


私は思い出してはいけない記憶に赤面しながら、彼に背を向ける。


「私より海東くんの方が細そうだから、女として気まずいんだよ」


「桜庭さん、太ってないでしょう」


海東くんの声がぐっと背中に近付く。
それから、不意に私の腰に腕が巻きついた。
海東くんが背後から私を抱きすくめたのだ。
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