ひねくれ作家様の偏愛
『痛くないように、ゆっくりしますから。身体固くしないでください』


海東くんの声は事務的だった。
それが余計に、私の身を竦ませた。
正直、怖かった。
男性に触れられるのも、性的な交渉を持つのも初めてだったから。

好きな人とするものだと思っていた。
お互い好きで好きでどうしようもない二人が、愛を確かめ合うために抱き合うのだと思っていた。
それがセックスなのだと、少女のような夢を秘めていた。

現実はこんなものだ。

海東くんは私を道具として見ているし、私は彼の作品を愛するがゆえに従っている。

海東くんにわけもなく惹かれるこの心は、きっと歪んだファン心理。
だから、恋と混同するのはやめよう。


私が自分でブラウスシャツのボタンを外そうとするのを、海東くんが押し留めた。


『俺がやります』
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