ひねくれ作家様の偏愛
私は後から後から流れる涙を拭った。

海東くんの声も瞳もたまらなく慕わしかった。
今にも、あの部屋に戻りたい。
下僕でも召使もいい。性欲処理でもいい。
また、優しく抱き締められたい。

ファンでもなく、担当者でもなく、女としての欲求だった。
初めて感じる気持ちだった。


『だからこそ、絶対だめ』


私は甘ったるいコーヒーを嚥下し呟く。

けじめをつけろ。
私の矜持は彼の作品を愛し、世に出す手伝いができること。

涙を拭って、私は一夜の記憶を心の深い部分に封印した。






……今更、封印の鍵がぶっ壊れるなんて失敗だ。
大失敗だ。





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