ひねくれ作家様の偏愛
「変な噂流すなよ。モテなくなるだろ」


飯田が口の端を引きつらせながら私のデスクを覗き込む。


「え、だって事実だし」


「ま、いーけど。今、彼女募集してないから」


「あ、そうなの。じゃ、小松に言っとく。知らなかったけど、飯田って人気あんのね。女子に」


私の感心した声音に、飯田が頬をゆがめて微苦笑した。


「知らないのおまえくらいだから」


そうなんだ。
同期の噂なんて、よくわかんないよ。色恋沙汰じゃ特に興味ないし。


「ところで、その服」


飯田も小松と同じく紙袋を指差す。それから声をひそめた。


「海東センセのだろ?なに、おまえらってお泊りし合う関係だったの?」


私は途端に赤面した。
正直、自分でも小松に聞かれたときと反応が違うと思った。

服の持ち主が飯田から海東くんに変わったことで、これほどわかりやすく過剰反応してしまうとは。
ここに小松がいたら、100パーセント事実が露呈しただろう。
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