ひねくれ作家様の偏愛
「断じてそういう関係じゃないけど、なんで海東先生のだってわかったの?」


「このシャツ、本人が着てるの見てるし。先週の金曜日」


ああ、海東くんがロビーに来てると教えてくれたのは飯田だったっけ。
私はいっそう声をひそめて言う。


「海東先生、雨でびしょびしょで。会議に出せる作品ができる前に、風邪引かれても困るし、私んちで着替え貸したんだ。ほら、近所だから」


自分で言いながら、ものすごく言い訳くさかった。
後ろめたいことなんてナイですよーと、言い張れば言い張るほど、変な空気になってしまう。


「ふぅん、付き合ってはいないんだ。海東センセの想いに応えてやったのかと思った」


「だから、飯田の予測、おかしいから。そういうのナイの、私たち」


言いながら、言葉の通り100パーセントではないと思う。
そろそろ、私も海東くんの垣根を飛び越えた行動を、無視できないところまできている。

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