ひねくれ作家様の偏愛
「これ、金曜の服。洗濯しといた。あと、こっちはお昼」


服の入った紙袋をキッチンカウンターに置き、途中のコーヒーショップで買ったサンドイッチの袋を掲げて見せた。


「なんですか、来るのは午後の予定でしょう。そんなに暇なんですか」


「暇じゃないけど、どうしてるか気になって」


「今、書いてますよ。書き上げるまで桜庭さんには見せませんけど」


海東くんは嫌味を言いながらも、おとなしくサンドイッチを受け取った。

目の下のクマが濃くなっている気がする。
頬もこけているように見える。
この週末も休まず書いていたのだろうか。

海東くんがサンドイッチを口に運ぶのを待って、私は本題を切り出した。


「この前、飯田が変なことを言ったみたいだけど……」


そこで言葉を切り、普段ろくに目も合わせない海東くんの顔を見据える。


「私、今のところ異動する予定はないから。ずっとあの編集部にいるから」
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