ひねくれ作家様の偏愛
一瞬の間。
次に、海東くんが気だるそうにペットボトルの蓋を開けた。
真っ黒な炭酸を一口飲んでから言う。


「桜庭さん、なんか自惚れてません?俺はあんたがどこに異動になろうと、どうでもいいんですよ」


はっとした。

確かに、今自分が口にしたことは自惚れで、不適当だったかもしれないと思い当たった。

海東くんに仕事のスイッチが入った理由が私であることは間違いない。
それくらいはバカな私だってわかる。

だけど、それを口に出すのはプライドの高い彼の逃げ場を奪うようなものだった。

案の定、海東くんは続けて冷えた言葉を吐く。


「俺はあんたのためになんか書いてない。自分のために書いてる。それとも、ずっと自惚れてたんですか?好かれてるかもって……」


「違う……よ……」


否定の声が震える。
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