ひねくれ作家様の偏愛
①
私の目の前にはソファで眠りこむ海東くんがいた。
24歳になったばかりの海東くんは、疲労からか私とそう変わらない歳に見えた。
約束の木曜だ。
海東くんの原稿のタイムリミット。
私は海東くんが眠るソファの横、床に座り彼を見つめていた。
寝息が乱れたかと思うと、次の瞬間に海東くんがゆるゆると目を覚ます。
「……すいませんね。ちょっと休憩のつもりだったんですが……あ、原稿そこです」
「うん、そうかと思って、海東くんが寝ている間に読ませてもらったよ」
私は原稿を手に、身体を起こした海東くんの向かいに座った。
彼は反応を待っている。
海東くんの瞳を見つめ、私は頷く。
「いい、と思う。正直、口を出したいところもあるけど、今回はこれで会議に回してもいい」