ひねくれ作家様の偏愛
お台場に入ると少し景色が散歩様になってくる。
開けた造成地に立つビル、レジャー施設。
やたら広い駐車場に、草のしげる空き地。
埋立地はまだ開発中の場所も多い。

潮の匂いを感じながら、ビーチの横を通る。
平日午後の海浜公園には犬の散歩をする人や、幼稚園ほどの子どもと母親の姿がある。


付き合ってくれと言う割に、海東くんは手を繋いで以降ほとんど喋らなかった。


変な気分。
海東くんと二人で歩いている。
高鳴る鼓動はおさまらない。


いつだって、打算と惰性に満ちた距離が自分たちの間には横たわっていた。
出会ったときからそうだった。
だけど、こうして二人歩けば、こんなに優しい気持ちでいられる。
今、私が感じている迷子のような感覚を、おそらく海東くんも感じている。

作家と担当。
お互い少しずつ肩入れしすぎてしまったせいで、私たちはすぐに立ち位置があやふやになってしまう。
執着の息苦しさをお互い居心地よく感じ始めている。

この関係はおかしい。
本当は繋いだ手をすぐにでもふりほどいた方がいいのだろう。
だけど、そんなことをしたくない私がいる。
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