ひねくれ作家様の偏愛
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海東くんのマンションに向かった。
会議の結果と、これから行く旨はすでに電話してある。
熱いくらいの陽射しが少し傾いてきた夕刻、彼のマンションにたどり着く。チャイムを鳴らしてから、いつもどおりドアを開けた。
「海東くん」
奥に向かって声をかけた。
返事はない。
私はリビングと仕事部屋に海東くんがいないことを確認し、仕方なく寝室のドアをノックした。
「海東くん、いるんでしょう」
相変わらず返事はなかったけれど、中に誰かいる気配はした。
迷いつつ、「入るよ」と声をかけてノブを回す。
その寝室に入ったのは例の夜以来だった。
あらゆる本が乱雑に詰まった書架、濃紺のカバーがかかったセミダブルのベッド。
海東くんがそこにうつ伏せで転がっていた。