ひねくれ作家様の偏愛
「キスさせてください」


思いも寄らない申し出に、私は絶句した。
冗談かと目の前の海東くんを確認する。

すると、揺れていた視線が私に固定され、切れ長の美しい瞳が私を捉えていた。
頬は赤いまま。
あまりに真摯な瞳の力に、本気なのだとわかってしまう。

拒否するべきか、受け入れるべきか。
そんなことを考える余裕はなかった。

同意を待ってはもらえず、海東くんの唇が私のそれに重なるのに、一秒もかからなかったからだ。

今まで一連の告白や、抱擁が一挙に脳内に満ち、心臓がパンクしそうに跳ねだした。

柔らかな感触を味わう間もなく、すぐに唇を割って海東くんの舌が入ってきた。
反射的に逃げようと身体が竦む。
でも、いつの間にか海東くんの腕ががっちりと私の身体を抱き締めている。
私は逃げるのをやめ、おそるおそる海東くんの腰に手を回した。

深く侵入した舌が私をとかす。
それは優しくて、慎重な蹂躙だった。

有無を言わせない強引さを秘めながら、私に拒絶されたくないという不安感が感じられた。
今だけは彼を受け入れたくて、できることなら何でもしたくて、私はつたない舌を必死に絡め、彼のキスを肯定する。
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