ひねくれ作家様の偏愛
出版会議から、2週間。
『ともし火』にて連載決定。

彼にとっては、とてもいい結果につながったことになる。

私は嬉しさを噛み締めながら、駅まで歩く。



会議でボツを食らった直後、私は再び海東くんと関係を持った。
強い望みに答える形で、彼に抱かれた。

どん底にいる彼に、私の真心と愛を伝える方法はあれ以外なかっただろう。


会社には戻らず、そのまま一晩中彼と抱き合った。

翌朝、隣で目覚めた時の海東くんの顔が忘れられない。
私の身じろぎで起きた彼は私に向かってふわふわと表情を緩めた。子どものような微笑だった。

ああ、よかった。
起きたら隣にお母さんが寝ていた。

そんな安心と純粋な愛に満ちた微笑みだった。

愛しくて切なくて胸が締め付けられ、言葉を失った。心の底から、海東くんを愛していると思った。


『コーヒー淹れますね』


それから、海東くんは明らかに浮かれた態度をとらないようにしているのか、顔をそむけ身体を起こしたのだった。
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