ひねくれ作家様の偏愛
あれから2週間、彼と私の関係性は作家と担当編集者のまま。
大きな変化はない。

あるとしたら、海東くんが新しい作品の構想をポツリポツリと話すようになったことと、私に意見を求めるようになったこと。
今回連載が決まり、第1回分の改稿も打診したけれど、彼は素直に応じた。


態度の軟化は感じる。
その裏にある細やかな愛情も伝わってくる。


私たちに『付き合う』という約束はなかった。


私は殊更口にしないし、海東くんも表立って口にはしてこない。
今は、私に気持ちを受け入れてもらえたということが、彼の心を満足させているようだった。
あるいは、「いつかは」という想いが彼の中にはあるのかもしれない。

だからこそ、海東くんは私への接触も対応も慎重になっている。

本当は触れたいのに、キスしたいのに、泊まっていってほしいのに。
そんな気持ちをわかりやすく覗かせながら、無理強いしないようにしている様子が見て取れる。

名前で呼ぶのも、けじめなのかベッドの中だけと決めているようだ。
2週間、私たちに身体の接触はないから、名前で呼び合うこともないのだけれど。
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