ひねくれ作家様の偏愛
彼を支えると決め、身体を繋いだ。
いつか、捨てられても文句は言うまい。
彼の才能を愛した私には、その結末も仕方ない。

頭ではわかっているのに、心がついていかない。
彼を独占できる今を愛しく想いながら、いつか捨てられる恐怖を覚える。

ほら、今もまた。
海東くんの連載が決まったことを喜びながら、彼が光の中に戻っていく不安に胸がつぶれそう。


私はこの2週間、彼のささやかな欲求に気づかないふりをしている。
彼の望むまま逢瀬を繰り返していたら、私は離れられなくなる。
だから今みたいに、彼が触れたくても甘えたくても、にっこり笑って距離を作る。

ズルいヤツ。
支えるとか言っておいて、自分のダメージが少ない方法を必死に探してる。
最低な女。


ゆりかもめが音をたててホームに入ってきた。
修学旅行生がびっちりと乗っていて、車両内は熱気がすごい。
セーラー服の半袖に夏を感じる。

私は汗を拭い、なるべく外を見る。
レインボーブリッジの向こう、観覧車がゆったりと回っていた。





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