ひねくれ作家様の偏愛
「彼女、いるのかなぁ。いるんだろうなぁ。私じゃ、隣に並んでも釣り合わないなぁ。ってか、そのへんのフツーの女子じゃムリですよね」


小松の呟きにドキッとする。これには笑ってはいられない。

女子力高めで充分可愛い小松ですら、『釣り合わない』と言わしめる海東智。
私なんか、余計釣り合わない。


「桜庭さん」


挨拶を済ませた海東くんが私の元へ戻ってくる。

小松に会釈をすると、もう帰る気満々で言う。


「外で打ち合わせでしょう。行きますよ」


「あ、うん。……小松、昼休憩かねて出てくるね。何かあったら携帯鳴らして」


小松が口を開かず、コクコクと頷いて私たちを見送った。


「あー、息が詰まった。面倒くさいですね、こういうことって」


オフィスビルから出るなり、海東くんが伸びをする。


「まあ、そう言わないでよ。あんまり、何度もあることじゃないから」
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