ひねくれ作家様の偏愛
「そうそう、挨拶なんてあんまり機会がないって言ったばかりで悪いんだけど、再来週にラノベの方で内山田先生の10周年パーティーがあるんだ。編集部主催でやるんだけど、海東くんにも招待状渡しておくね」


「俺も行かなきゃダメですか?」


「強制じゃないよ。きみの場合は急に連載が決まったわけだし。でも、うちの執行役員やソフト開発の人間も来る。海東智の復活アピールにはいい場なんじゃない?」


海東くんはオムライスに突き立てようとしていたスプーンを止め、考えるように視線をずらした。


「興味ない……って言いたいですけど、そうもいかないですね。天才高校生ライターって肩書きはもう使えないですし、セルフマーケティングは大事です。行きますよ」


私は良い返事にほっと胸を撫で下ろす。
彼にとっては、面倒でも将来につながる機会になる。顔を出してくれるに越したことはない。
セルフマーケティングを考えてくれるまでになったなんて、大人になったなぁと感慨深い。


「桜庭さんも来るんでしょう?」


「行くよ」


「じゃ、余計行かなきゃな。悪い虫がつかないように」
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