ひねくれ作家様の偏愛
軽い独占欲を含んだ言葉に私は頰が熱くなった。
こういう、男性慣れしていないところが格好悪いけれど、純粋に彼の気持ちが嬉しくもある。

海東くんは私の反応を楽しそうに見てから言った。


「そうだ。今週の土曜、付き合ってくれません?」


「え?なにに」


「パーティーに出るようなスーツが今ないんです。10代の頃のものはみんな丈が足りなくて」


確かに出会った頃より、彼の身長は伸びているように見える。
170センチ代の後半くらいには伸びただろうか。


「仕立てたんじゃまにあわないけど、既製品なら買いに行ける。一緒に来てください」


「私も行くの?」


「心配なんですよ。パーティーなのにあんたがまた適当な格好で来るのが」


「あ、でも作家さんたちは結構カジュアルな人もいるよ」


「桜庭さんは編集部の人間。なんちゃってフォーマルみたいな格好じゃ、俺が恥ずかしいんです」


相変わらず傲慢なお言葉。
っていうか、俺が恥ずかしいって。
それは担当編集と作家としてだろうか。それとも、恋人としての意味を含んでいるだろうか。
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