ひねくれ作家様の偏愛
「最初、桜庭さんだとわかりませんでした」


駆け寄ってきた海東くんは、私を見下ろして驚いた顔をしている。
頬が少し赤らんでいるのは走ったからだろうか。


「海東くん、こんにちは。変じゃないかな。隣歩いても」


私はコンタクトを装着した目で彼を見上げる。
海東くんは照れたように視線をそらした。口元を押さえるしぐさを見せる。


「ちっとも変じゃありません。見違えました」


見違えたって。
褒め言葉だよね。

でも、アラサーなのにスカート短いとか思ってないかな。
試着もしたのに、膝小僧が見える丈を買ってしまったことを後悔している。
何より、こうして歩いてみるとはき慣れないスカートが不安でしょうがない。

3センチヒールのパンプスも、私には精一杯の高さ。
アンクルストラップがついていなかったら、確実にカポカポ脱げて情けないことになってしまう。


「可愛いです」


「かわ……!お世辞はいいから!」

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