ひねくれ作家様の偏愛
*
初めてのデート(らしきもの)は無事に終わり、私たちは帰路へ着くことになった。
「プライベートな時間に悪いんですけど、ちょっと今書いてるもののチェックをお願いしてもいいですか?」
海東くんは連載が決まった作品とは別なものも書いている。
次の連載がうまくいけば、彼にはまた別なチャンスがめぐってくるはず。そのために、書けるときに書いた方がいいと言ったのは私。
“専属契約”という名称も、連載開始時に作品単位の契約に変わった。余所から仕事をもらうにはちょうどいい。
海東くんに相談されては、私だって張り切ってしまう。
彼の部屋に寄って打ち合わせをしてから帰ることにした。
海東くんのマンションにたどり着くと時刻は17時半。
初夏の日は長く、まだ真昼のように明るかった。
エレベーターに並んで乗り込み、27階を押す。